粥村で聞いた話

鳥を見たり見なかったり食べちゃったり

映画三本

8月の初めにドラゴンクエストの映画を観てしまったのだが、まぁそれはサテオキ ^^;

シネコンに慣れてしまった自分を戒めるため、ミニシアターに行ってみようと思った。ウソである。単純に「ミニシアター」という言葉に魅力を感じただけかもしれない。

そんな中、今回は見逃してしまったクリント・イーストウッドの『運び屋』が、飯田橋の名高い名画座ギンレイホールで観られると知り、かみさんとふたり、出かけてみたのだ。

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見逃した運び屋を見に来た

 

この映画館の特徴は、

  1. 観客の入替がない
  2. 指定席はなく、並んだ順に入場
  3. 2本立てである(1本観ても2本観ても、ずっと座っていても(基本的に)料金は同じ)
  4. 飲食持ち込み可(上映中の飲食はもちろんお静かに)
  5. ほとんどのお客さんが年間パスを持っている(ように見えた)
  6. 年齢層が高い(ガキがいない=マナー高水準)

……などであろうか。古いことは古いのだろうが、描いていたほどの場末感があるわけでもない。もっと汚いホールが昭和50年代にはあったからね。

この日は土曜日であり上映作品の切り替え日にあたっためか、加えて人気作品であるためか、開場の40分前に到着したにもかかわらず、待ちの列は地下鉄の階段の途中まで伸びており、およそ50名ほどの先客がいた。あぶない ^^;

 

肝心の映画。

『荒野にて』(原題 Lean on Pete)は少年が苦難を乗り越えていくジュブナイル、とはちょっと違うか、なんと表現すればいいのかな。大人になっていく……とも少し違うけど、非常にセンシティヴな、ナイーヴな時期を苦労して乗り越えていくお話、とでもいったらいいかな。ちょっといくら何でも普遍化しすぎか ^^;

主人公のチャーリーが罪を犯し、それを正当化することなく犯罪として描いているし、うやむやになかったことにもしていないことで、つまらないご都合主義の感傷的ドラマに終わらせなかったことが成功だと思う。古き良きアメリカの少年が大人になっていく様、という感じだ。おそらく現代のアメリカ人とは全く違う、アメリカ人がある種の理想と描く少年像なのではないかと思う。まぁ犯罪をやっちゃうところが日本人の理想とはちょっと違いそうだが。

 

そしてメインの『運び屋』だが、その前に観客が増えて満席となり、立ち見も出ていたようだ。幕間にトイレに立ったかみさんは、トイレ待ちの行列で一度劇場の外まで出ざるを得なかったそうだ。ギンレイホール恐るべし。

 

『運び屋』という作品についてだが、クリント・イーストウッドの演技力、雰囲気、存在感、そういったものが随所に光る名作だ。いや、そうなんじゃないかと思う ^^;

そんなに映画を客観視できないからね。素養も無いし。

仕事ばかりで家庭を顧みなかったじいさんが、犯罪組織に利用されながらもわりと脳天気にそれを楽しみ、そして最終的には妻や娘に受け容れられる、という人間ドラマ。それが(先の『荒野にて』で書いたような)ご都合主義的結末を迎えてもなお、安っぽさにならないところがクリント・イーストウッドのすごさなんじゃ無いかと思う。これはもう、言葉で説明のしようが無い。

劇中、「ジェームズ・スチュアートに似てる」という台詞があって、客席から笑いが漏れたが、ワシら夫婦には何のことやらで、笑いに参加できなかった ^^;

なんでも生涯スキャンダルもなく、クリント・イーストウッドとは対照的な俳優らしい。周りの皆さんはやはり映画通なわけですな。

 

映画が終わって外に出ると、入場待ちの行列がまたも2,30人伸びていた。もし再度来ることがあっても、できるだけ平日にしようと思う ^^;

 

翌日は立川に新しくできたkino cinemaに行ってみた。

椅子の背もたれが高く、そのせいで前の座席とかはほとんど気にならないだろうと思われる。今回は前から二列目だったし、非常に空いていたのでそもそも気にはならないのだが。座席と座席の間にはカップホルダー付きの肘掛けが二本並んでいる。つまり座席の両側の肘掛け(とカップホルダー)を専有できるので、隣の人を気にする必要が無い。これはありがたい。ただ、かみさんは座り心地をあまり気に入らなかったようだ。深く沈みすぎると言ってたかな? 柔らかすぎとか。ワタクシには全く問題が無かったが。

シネコンと違って飲み物売り場の前に行列はなく、そもそもエリアも狭いので非常にこざっぱりしている。新しいせいもあるだろうが、とても清潔で好感が持てる。

 

ここで観たのは『存在のない子供たち』という作品。かみさんが観たいと言うことで、ワタクシとしては本当に何の先入観もなし。まだWikipediaに記載も無いんだな。

ベイルートの貧民街に住む少年ゼインの物語。出生証明もなく、教育も受けられない。妹は売られるように嫁がされ、ゼインは一人で家と家族を捨てて当てもなく世の中に踏み出していく。そして繰り広げられる、我々日本人の恵まれた世の中とは遠くかけ離れた、しかし本物の世界。ものすごいリアリティで迫ってくるこの映画に、ワタクシは思わずむせび泣いてしまった。涙がほろりと流れる、というのは映画を観ていてしょっちゅうあるのだが、こういう泣き方はあまり記憶にない。
帰ってから調べて納得。俳優をほとんど使わずに、本当に悲惨な生活を余儀なくされている人々を起用し、演技指導のようなことをせずに、素のままで演じてもらっている、と。なるほど、道理でドキュメンタリーを観たあとのような気持ちになったわけだ。
最後のシーン、ゼインの笑顔が最高なのに、それを思い出すたびに涙が溢れそうになる。この映画は、是非多くの人に観て欲しい。

 

さて、このあとはロケットマンも観なければならないし、来月にはアイネクライネナハトムジークも公開になる。伊坂と斉藤さんに多部ちゃんという、俺得な映画だけに、少なくとも一回は観なければならない。

例年映画は年に2,3本程度なのに、今年はどうしたことかなぁ…… ^^;