緊急事態宣言は解除されたものの、東京アラートなるものが発動されている。それでも世間は少しずつ、部分部分で平常を取り戻しつつある。
そんな中、映画を観に行ってみた。
映画のタイトルは『島にて』。世間に広く知られた映画ではない。ただ、鳥見屋の間では名の知れた島である、山形県の飛島を舞台にしたドキュメンタリ映画だ。
あちこちのミニシアターを中心に上映される予定だが、ステップ2に移行したタイミングで真っ先に上映することになった、ポレポレ東中野まで行ってみることにした。
少々早めに着いたので、周りを歩いて喫茶店を探してみたら、運良く良い店に巡り会った。
座席が10ほどの喫茶店だが、実際はそんなに入れないだろう。だが、とても落ち着かせてくれる雰囲気があるし、ワタクシのような一見の客にも、おそらく常連さんと変わることのない姿勢で接してくれていると感じた。それは言葉による歓迎ではなく、この背中で歓迎してくれている、という空気だ。
鳥見屋には嬉しいデザインのカップ。どうやらこの店のモチーフらしい。ワシミミズクだろうか?
雑然とした狭めの店内には、南米のものが溢れている。本棚にトールキンの本が見えたので手に取ってみたが、英語ではなくておそらくスペイン語だった。店主さんの南米愛を感じる ^^;
コーヒーはもちろん美味しいが、その割りにとてもリーズナブルな価格設定に驚いた。もしまたこの映画館に来ることがあれば、また寄ってみようと思う。
さて、ポレポレ東中野である。
初めて訪れた映画館。入ってみると、ワタクシが勝手に描くミニシアター像にピッタリで、嬉しくなる。その点では、飯田橋のギンレイホールと似た類いという感じだ。
座席数をかなり減らして、もし満席になっても収支は赤なんじゃ無かろうか、と思わされる状態。しかし客の入りは更に心配になるほど少ない。まぁ平日の午前中だし、日本人の真面目さ、慎重さを表しているのかもしれないが、出来ればもう少しミニシアターを守って欲しい。無くなってから惜しむ愚は犯したくないものだ。
さて、肝心の映画。
かつての十分の一以下まで人口が減少している飛島。そこに住む島民たちと、新たに飛島を居住地として選んだ人たちの両面と、その関係性を描いている。過疎地ならどこにでもある問題だろうが、離島というのはやはり、明確にそれ以外の世界と離れている。
おそらくは、物理的な面だけで無く、精神的にも離れているのだ。
島を盛り上げようと移住してきた新参の方が、島民の老人に「波風を立てるな」という意識を向けられる、と語るのが印象的。島の子供たちは「島を出たらもう帰ってくるな」と言われて育つと言うし、島に残る老人たちは、寂れていく島の行く末を受け容れているようだ。
もちろん、移住してきた人たちは、島の役に立ちたいという姿勢でやって来るわけだが、その気持ちを汲んでもらえるようになるまで、一年はかかった、という。それに耐えて残った移住者たちには恐れ入る。
そもそもこの映画が気になったのは飛島が鳥見屋にとって素晴らしい島であるからで、それは数日だけ訪れるからそう考えられるわけだ。
これから老いていく自分の将来を描く上で、なにかヒントになるものがあれば……などという気持ちでかみさんを連れて見に行ったわけだが、得た感覚は、自分たちは離島には溶け込めそうもない、というあらかじめ想像できたはずのものだった ^^;
いや、そもそも飛島に行ったことは無いのでいつかは訪れてみたいのだが、それはやはり旅行者として、でしか有り得ないようだ。