粥村で聞いた話

鳥を見たり見なかったり食べちゃったり

うぉっしゅ

今年3本目の映画です。去年の半分くらいのペースに落ちていますが、むしろ例年のペースに戻った感じです。

ワタクシが映画を観る場合、元々アンテナを張っているわけではないので、こちらから探しに行きます。大体はアップリンク吉祥寺の公式サイトに行って、上映中の映画を片っ端からクリックしてみます。そこで内容にピクンと来るものがあるか、無ければ別のミニシアターを調べたりします。

今回、ピクンときた映画がこちらでした。

wash-movie.jp

岡﨑育之介監督、中尾有伽・研ナオコのダブル主演です。監督はその血筋が注目されてしまうでしょうが、そこがキモではないのでここでは割愛します。

パンプレットを読んで初めて分かったのですが、監督の熱量がすごいです。若さで押し切っているところもあるのでしょうが、今後、すごい作品を次々生んでいくだろうと想像できる熱量です。

 

このくらい前置きがあれば、そろそろネタバレしてもいいスクロール量ですかね。

 

大まかな映画の筋は、ソープ嬢の加那がふとしたきっかけで、認知症のおばあちゃんの介護をさせられることになったものの、おばあちゃんである紀江さんには忘れられており、頑張ってもなんだか報われない、というのはおおかた予想どおりの展開。

加那は十分な稼ぎがあるのか、独り暮らしの家事を家政婦に任せており、その家政婦である名取さんとのやりとりがまた、この物語にいい色を付けている。

加那は自分の母親や実家の周囲の人たちに自分の仕事がソープ嬢であることを明かしていない。これもまた、そういうことも有るだろうというか、普通はそうなっちゃうだろうな、と納得させられる。そんな中でなかなか厳しい態度で加那に接してくる名取さんの存在はおそらく非常に重要で、加那も名取さんにだけは包み隠さずに全てを話している感じ。きっと彼女自身は気づいていないけど、ソープ嬢の友人たちとは別の意味で、彼女を支えているのだと思う。

また研ナオコ演じる紀江さんも時々ズバッと加那のこころを貫く言葉を発する。

「職業に貴賎は無い!」

とか。認知症は最近のことを忘れてしまうけど、むかし身に付けたことは消えない。つまりとても正しいことを主張することもあるのだ。そんなことすら忘れがちだ。

そしてこの映画の中で最も重くて、そのうえ真実を述べているのが、加那の「おばあちゃんが私のことを覚えていないんだよ」という言葉に対して名取が言った「違うよ。おばあちゃんがあなたを忘れたんじゃなくて、あなたがおばあちゃんを忘れたんだよ」という台詞だ。

そしてこれが刺さったということは、ワタクシにもちょっと思い当たるところがあるわけだ。

 

ところで劇中、紀江さんはニューヨークでアルトサックスを吹いていた過去があることが明らかになるが、そこを全く深掘りしなかったところに、なにか岡﨑監督の映画へのスタンスが垣間見られる気がした。枝葉を茂らせすぎると、幹が見えなくなってしまう。

 

個人的には、加那が実家に通う坂道を見た瞬間、軍畑(いくさばた;青梅の山のほう)の駅に上っていく道に似てるな、と思ったら、おそらく正解でした。まだまだ青梅のあたりのほうが土地勘があるようです ^^;

ビジュアル的には、何度かあるこの坂を登る加那の姿と、カラーボールがふたりに向かって降ってくるシーンが、この映画のハイライトだと思います。

 

という感じでこの記事を締める方向なんですが、アフタートークがあったんですよ。もちろんその点でピクンと来たのもあるんですが。

そして岡﨑監督曰く、日本初のVTuberとのアフタートーク、らしいです。

VTuberおことさん登場

で、このVTuberがなんだかダミ声なんですな。

そして結局中の人登場。

後期高齢VTuber、おことさん

岡﨑監督に負けず劣らずパワフルなおことさん……。色々すごい経歴も聞きましたが、まぁ……そんなに……興味が ^^;

 

アフタートークの更に後には、いつものサイン会です。監督だけと思ってたのに、名取さんを演じた髙木直子さんが居るじゃないですか! なんてラッキー。

映画を観る前にパンフレットを買っておいたので、一番にサインをしてもらい、次の人も来ないので長々とおしゃべりさせていただきました。

うぉっしゅ サイン入りパンフ

僭越ながら、自分もそろそろ人ごとでは無い状況があることをお話しした結果、髙木さんにずいぶん真剣なお話をしていただけました。

サインだけでなく、お話をいただく

「(認知症が始まって)そこからが面白いのよ。だんだん若くなってきて、昔のことを思い出してくるの。そのうちお父さんとのなれそめとか話し出すかもしれないわよ。」

なんて感じで、まるで友達みたいに話してくださった髙木さん、すっかりファンになりました ^^;

風に立つ愛子さん

東日本大震災のあと、避難所から仮設住宅、復興住宅と移り住んだ老婆を追ったドキュメンタリ。その中で、避難所にいた時が一番幸福な時間で、仮設、復興住宅と移り住むことで次第に人との関わりを失い、「おひとりさま」へと戻ってしまった愛子さん。

そんな紹介文を読み、避難所よりは仮設、仮設よりは復興住宅のほうが恵まれているだろう、と思った自分の浅はかさにドン、とどつかれたような気がして、どうしてもこの映画を観なければいけない、とポレポレ東中野まで出かけた。

aikosan.brighthorse-film.com

 

いつもながら、ネタバレを含みます。

ご注意を。

震災前から人付き合いが希薄だった、というのが愛子さんの特徴だろうか。地震津波に耐えて助け出され、避難所に移ったことで、愛子さんはいきなり濃密な人とのつながりの中に放り出される。しかし困った者同士の助け合いが強かったのか、人間関係にも恵まれ、愛子さんは避難所生活に幸せを感じていたようだ。震災が無ければ味わえなかった人付き合いを享受し、津波を『津波様』とまで呼ぶようになる。

一方で被災地の復興は、早いとは言えなくとも着実に進み、愛子さんの住みかは避難所から仮設、仮設から復興住宅へと移っていく。もちろん一般的に言えば住環境は次々改善され、事態は好転していく流れであるはずだ。

しかし、これが愛子さんにとっては孤独な人生への逆戻りを意味していた。

避難所から仮設への移動は、避難所で一緒だった人たちのコミュニティごと移動できるわけではなく、それぞれバラバラに移動していく。行先は自分が住んでいた場所にではないし、知り合いも皆無。

脳天気なワタクシでも、おそらく精神に変調を来すくらいの試練であることは想像できる。

ポスター(切れてしまった ^^;)

愛子さんは被災から助け出されるまで、3日間ほど身動きが取れない状態で絶望と戦っていたという。そこから人生で初めて、人付き合いを楽しめる環境に入り、またすぐに孤独を押しつけられた。この想像を絶する振り幅のジェットコースターのような浮き沈みに耐えられる人間は、そう多くないはずだ。

結局、良かれと思ってなすことが、万人にとって良いわけではない、という実例を突きつけてられたわけだが、これもみな高校生の頃に習った(たぶん、習ったはず)功利主義に集約されてしまうものなのか……。

 

さて、自分の理解力ではいつもの通り、一度映画を観ただけでは薄ぼんやりとしたモノなのだが、今回もそれを補ってくれる有り難いお話が。

藤川佳三監督のアフタートーク

この映画、ほぼほぼ藤川監督と愛子さんの二人三脚のドキュメンタリーだ。従って藤川監督の解説はありがたい。このありがたい映画が満席にならなかったことが不思議でならないし、なんかもう、藤川監督に謝りたい。ワタクシのせいじゃないけど ^^;

そしてもう一つ、補ってくれるのがパンフレットだ。

藤川監督のサイン入りパンフレット

サインをしていただく間にも、愛子さんのパーソナリティに関わるような質問に、丁寧な答えをいただいて、より理解度が上がった。

ドキュメンタリーは特に、アフタートーク付きがオススメです!

今年最初の映画は、『敵』でした。想像と違ってほぼ満席。河合優実さん人気の影響かな、などとも思いましたが、やはり筒井ファンなのだろうなと思わせる年代の方も多数。

『敵』 パンフレット

ネタバレとかの迷惑も考えずに書きますので、ご注意を。

 

前半、主人公の渡辺儀助が淡々と生活するさまがモノクロームで静かに描写される。限られた資金が潰えるまでを計算して生活する儀助、その毎日の食生活までがシステマティックで、感情を押し止めた学者らしさで進むが、その内部に残っている人間くさいモノが徐々に見え隠れするようになる。

「敵がやって来る」

という謎のメッセージを受けてから、話は筒井らしくなっていく。観ながら、朝のガスパールとか東海道戦争とか、新旧取り混ぜて筒井ワールドが頭を掠める。が、そのどれとも違う。

敵は儀助の頭の中だけに存在する。果たしてそれを老いのためと見るか、或いは認知症と見るべきか。いずれにしても認知機能の衰えだろう。玄関に石鹸を並べておいたシーンが、おそらくワタクシが実際に目にすれば「ボケたか……」と感じるとは思うのだが、まぁ作品上、大きな違いは無い。

アップリンク吉祥寺内の展示

ともかく、主演の長塚京三さんが圧巻の演技だ。特に終盤、小屋から飛び出すシーンとその後に倒れるシーン、僅かな間に20から30歳くらい老いたように見えた。恐ろしいほどの表現力を感じた。こんな凄い演技を僅かな小遣いで観られるとは、映画ってなんと有り難いエンタメなのだろう、と久しぶりに思った。

 

そしてエンディング、双眼鏡の視界に現れる死んだはずの儀助が何を表しているのか、ワタクシには分からなかった。

原作を読めば分かるのだろうか。

 

ここで原作の話だが、実はワタクシ、1998年の2月に、半日休暇を取って敵の出版記念サイン会に出かけているのだ。八重洲ブックセンターでお目にかかった敬愛する筒井御大は、開始40分程度でいきなり「タバコ吸っていいかな」と言いだした。休憩場所にでも行くんだろうな、と思っているとおそらく店員と思しき男性が灰皿を持ってきて、その場で喫煙を始めた。八重洲ブックセンターの店内でである。さすがとしか言いようが無かった。

近年、筒井御大は頸椎を痛めて老人ホーム的なモノに光子夫人と入り、タバコも止めたと聞く。てっきり『最後の喫煙者』を自演するものだと思っていたので驚いた。

まだまだ元気で何か書いちゃって欲しいと願っている。

 

そしてあろうことか、この27年前に買った『敵』を、ワタクシはまだ読んでいない。サイン本を汚したくなかったし、そもそもハードカバーって読みにくいんですもの ^^;

どうすればよかったか?

前回の記事で今年観た映画を9本としましたが、その後、10本目を観に行きました。場所は4年半ぶりのポレポレ東中野。社会問題目線のドキュメンタリー映画と言ったら、ポレポレ東中野です。

どんなところかご存じない方も多いでしょうから、東中野駅のホームから見た外観を。

かすかに壁にPOLEPOLEの文字が……

某居酒屋チェーンの入り口にしか見えませんが、だいたい合ってます ^^;

いや本当は右側がポレポレ坐のスペースですが。

壁の映画ポスターだけが、映画館の証です。居酒屋の入り口の左側に地下に降りる階段があります。社会派ドキュメンタリー作品が多いだけに、地下に潜行する感じが良く合います(ホントか)。

そして今回観たかった映画は、どうすればよかったか?、です。

dosureba.com

 

ここからは大きくネタバレしています。

さらにはもちろん、ワタクシの主観による、思い込みも含まれております。

ご注意ください。

 

先日観た『夜明け前 呉秀三と無名の精神障害者の100年』では、呉秀三先生が強く主張していた自宅監禁の禁止ですが、こちらの映画ではがっちりと、自宅に軟禁される姿が描かれています。そしてそれは演出でも演技でも無く、現実です。

統合失調症という、明日自分がなるかもしれない障害によって、家族関係がチグハグになり、緊張感に包まれ、それぞれの人生が狂っていく現実が淡々と記録されています。繰り返しますが、明日我が家に訪れるかもしれないシチュエーションです。

そんなとき、あなたは、わたしは、かれはかのじょは、わたしたちはどうすればいいのか。

正解は存在しません。

問題は提起されました。

考えるか考えないか、当人次第です。

 

映画のあと、藤野監督と共同制作者の淺野さんのアフタートークがありました。

藤野監督と淺野由美子さん

映画の終盤、監督が父上にインタビューするシーンで、父上はゆっくりじっくり考え、言葉を選ぶようにして答えます。ワタクシはその映像を見ながら、厳しいところを突かれて激昂するやもしれぬ質問に対しても、考え抜いて応えるその姿に、さすがに研究者だな、論理的思考をする人だな、と感じていました。しかし監督はそれを「事実を述べているとは思わなかった」と言っていました。もちろん、監督の理解が間違っているとは思えません。そしてそのように理解しながらも、父を責めるでも追及するでもなかった監督は、やはりそれでも家族を愛しているのだな、と感じて心打たれました。

 

演出された劇を否定する気はありません。しかし、実録の説得力は、やはり別物です。この貴重な記録を公開してくださった制作者たちに、心からの敬意を表したいです。

お二人からサインをいただく

おふたりの『動画工房ぞうしま』にはこれからも注目していきたいです。

2024に観た映画

まだ今年が終わったわけでもないのに一年を振り返るのはちょっと早すぎではありますが、今年観た映画を羅列してみます。深くは考えずに書いちゃうのは、一昨年観た『福田村事件』のアフタートークから得た学びです ^^;

2024年、ここまでに観た映画は平年より多めの9本でした。

 

鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎

かみさんによると原作とは違う部分もちらほらとあるらしく、これがホントの誕生ストーリーであるかには疑義有りとのこと。

そういう点はサテオキ、父ちゃんが意外とイケメンだったのが印象的だった。外見も、性格も。

水木という人物が出てきて、目玉おやじの原型とともに、財閥の親分と戦う。徴兵の経験と権力への怒りを感じるあたりに、水木しげるの本領を感じた。

弟は僕のヒーロー

これは以前書いたのでリンクでいいかな。

 

aiwendil.hatenablog.com

 

水平線

ローカルの日記に感想が残っていなくて、さすがに記憶が…… ^^;

以前の記事の中に書いたのを流用。

ピエール瀧さんの適材適所的な演技も良かったですが、本物の漁師なんじゃ無いかと思わせる渡辺哲さんの演技が凄い。足立智充さんの、観ていて憎悪の念を抱かせる演技も素晴らしかった。人生観や価値観って単純じゃ無いな、と思わせる映画。

 

秒速5センチメートル

アニメってほとんど観ないんですよ。これだけ有名な作品を、今まで観たことが無かった。サクラの季節にアップリンク吉祥寺が上映するということなので、初めて観てみた。故郷の栃木県が目的地だったなんて、全く知らなかった ^^;

携帯電話も無かった時代の待ち合わせが時に非常な困難を生むことは経験もしたことがあったし、主人公の気持ちがその頃を思い出させてくれて、ちょっと嬉しい映画だった。

 

さよなら ほやマン

前年にも観ていた映画だが、アフロのトークショーがあると聞いて、カーステでMOROHAをヘビーローテーションしながら迎え撃ったw

 

aiwendil.hatenablog.com

アフロはとても好感の持てる青年だったw

そして何度でも言うが、呉城久美さん、可愛い。

 

コットンテール

日英合作、たしかパトリック・ディキンソン監督の初長編だったんじゃないかな。

リリー・フランキー演じる兼三郎が意地を張って独走してしまうところに、自分の持つ危うさというか頑迷さみたいなものが写し出されているような気がして、どうにもヒヤヒヤしたり親しさを感じたり。さすがの演技力でした。

 

箱男

言わずと知れた、安部公房の名作の映画化。

そして結論から言うと、ずっと昔に読んだと思っていたワタクシたち夫婦、箱男未読だったようです ^^;

本筋とは関係ありませんが、実際に撮影に使われた『箱』が置かれていましたので、もちろん許可の下、ワタクシも被ってしゃがんだり、突然立ち上がって歩いたり、ふざけてみましたw

箱男になってみた

スタッフのお姉さんが心配して箱を支えようとしてくれていますが、私は元気です。

 

ぼくとパパ、約束の週末

これもリンクで済ませます。

 

aiwendil.hatenablog.com

 

夜明け前 呉秀三と無名の精神障害者の100年

この作品だけ、BD上映会です。

ことの発端は、将軍池でした。世田谷区内にある池の名前です。あまりに特徴的な名前が、しばらく前にウェブの地図で目にとまったことから調べ初めました。精神科の患者が自ら将軍と名乗ってあれやこれや……。とても興味深い話でした。そしてそこからあぶり出されてくる呉秀三という偉大な医師のこと。これらが気になって、ついに将軍池まで散策に出かけました。

将軍池

思った以上に大きな池、そして武蔵野の面影をしっかりと残した風景。素晴らしいところです。将軍さま、ありがとう。

そして偶然にも時を同じくして標題の映画を観る機会を得ました。

100年も前にこんな進んだ考え方をした医師が日本にも居たこと。そしてその思想が未だに実現できていないこと。またもちろん、現場には理想と現実の狭間で苦闘する医師や看護師たちがいること。今井監督(鳥の道を越えての今井監督!)もウェブでアフタートークに参加してくださり、また参加者からの貴重な意見も聞けて、とてもいい上映会でした。

 

2025年は……

以上、9本が2024年観た映画でした。あと1本で自己最多だったな……。数はともかく、来年もいい映画に出逢えますように。

ぼくとパパ、約束の週末

ひと月以上、楽しみにしていた映画が封切られたので、観に行ってきました。ASDの少年が、ふとしたことから推しのクラブを探す旅に出る、という物語です。

以下、ネタバレを含みます

 

自閉スペクトラム症の少年というキーワードと、ドリッテリーガ(ドイツ3部)までの56クラブをスタジアム観戦するために、父親と一緒にドイツ周遊の旅に出る、というかみさんとワタクシの興味を繋いだ映画。観るしか無いわけです。しかし最寄りの映画館が新宿というなんとも困った状況。こういう社会派映画はポレポレ東中野あたりで細々とやってほしいものですが、今回なぜか、シネコンです。しかも行ってみた結果、グッズはもとよりパンフレットすら置いていないという状況。だからそういうのはポレポレで……。

サテオキ。

こぎれいな新宿ピカデリー内部

スクリーンが10もある立派なシネコンです。飲み物がドリンクバーなんですね! そんな映画館、初めてです ^^;

もちろん鑑賞中におかわりは出来ませんが、そもそも2時間で膀胱の限界を超えそうな老体にとってはどうでもいいこと。鑑賞後、帰り際におかわりすることが出来るので、普通の映画館のドリンクよりお得な気もします。

 

さて、映画です。

ぼくとパパ、約束の週末

ASDの子供たちは聴覚的に過敏だということをよく聞きます。支援学級で働いていたかみさんからもよく聞いた話です。

この映画ではそのあたりを疑似体験できるように嫌なノイズをわざと混ぜているシーンがある、という話でしたが、見終わってからかみさんと「はて?」という感じでした。確かにややデジタル感のある音が混ざっているシーンもありましたが、期待していたような不快感を得るほどでは無かったような。あの辺りはもうひと押し欲しかったかな。

しかし主人公のジェイソンくんがときどき陥るパニック状態の表現は秀逸だった。そしてそれをいかに両親が押し止めようとしてもほとんど効果が出せないことも。

また家庭でメインとしてジェイソンの世話をしてきた母と、仕事から帰って彼と付き合う父親との温度差が、ことの重さは違えど一般的な日本の家庭と同じ構造であることもズキンとさせられた。母親の大変さを、父親は本当には分かっていない。

それを思い知った上で、ジェイソンの父が限界を超えて息子に対してキレてしまったシーンは、本当にやるせない。理屈の上で我慢しなければいけないと分かっていても、限界突破は起こり得るのだ。だって人間だもの。

 

サッカーファン、ブンデスファンとしては推しのクラブがどこになるのかと、彼の基準と照らし合わせて笑いながら観ることが出来ました。あまり笑っている人が多い映画ではありませんでしたが (^m^;

ワタクシの推しであるバイエルンではノイアー、コマン、ムシアラといったところがアップで映し出され、ドルトムントではロイスが何度も映されたので今期では無いことはよく分かりました。

同じくフォルトゥナの整列シーンで田中碧が映ったのがちょっと嬉しかった。

人に触れられることに耐えられないジェイソンくんが、入場時のボディチェックに勇敢に立ち向かうようになるなど、彼の成長ぶりも微笑ましいし、ほとんど合格点だったドルトムントが、残念なマスコットは除外、というルールに引っかかって除外されたのには思わず吹き出しました。

根拠のない予想ではザンクトパウリあたりの応援風景に心打たれて選ぶんじゃないかな、とか考えていましたが、結局そういう終わり方にはならず……。今も心のクラブとの出逢いを求めて、国境を越えての観戦の旅が続いている、というご本人たちのスチールショットがエンディングで映し出され、最後はなんとも羨ましい気持ちにしてもらえました。

自分も今度J3に上がる栃木シティの試合でも見に行ってみようかな、なんて思わせてくれる映画でした。

週の真ん中にアフロ

平日の仕事帰り、映画を観に行くためにかみさんと待ち合わせ。

もともと映画ファンではまったくありませんが、吉祥寺をブラつくのは学生の頃から好きなので、こちらに引っ越してきてからは以前よりも映画を観るようになりました。

さて今回は映画が終わるのが遅い時間帯になるので、先に晩メシです。

天ざる(ホントのメニュー名、失念)

吉祥寺の東急にある神田まつや。本店の方には行ったことが無いから比較は出来ません。お味はなんというか……あまりタイプではありません。やっぱりこういうのは個人の好みですからね。他人の評価は当てになりません。そこのところ、ご理解ください。

まだ時間が余るのでコーヒーでも、と同じ東急の中にある丸福珈琲店に入りました。

実はここの昭和浪漫というセットが好きだったのですがそれはもう20年くらい前。今ではまったく見なくなりましたが、丸福の本場である関西のほうではまだあるとかないとか。確かめに行くわけにもいきません。

珈琲ミルクレープが美味しい

甘すぎず美味しい、と思いましたが途中からやっぱり甘いな、と。それは普段の不摂生からくるかかりつけ医に対する恐怖に他なりません。糖尿怖い。でも甘いの美味しい。

 

さて、映画ですが、昨年12月にも観た『さよなら ほやマン』です。

昨年後半には『福田村事件』『月』『市子』といったそれぞれ素晴らしい映画を立て続けに観たのですが、その中でもこのほやマンを一番気に入りました。というのもMOROHAのアフロが主演ということで、もしかするとふざけた映画なのかな、と思いながらも、情報を探っているうちにこれは観なきゃ、と思い始め、観たらすっかり好きになってしまいました。

そしていつの間にか(映画通ではないので情報は入ってこない)主演のアフロと助演の黒崎煌代くんがともになんだか賞を受賞したと(ちゃんと調べれば良いのに)。

そしてそれを記念して、またUPLINKで上映し、アフタートークにアフロが来るというではないですか。

そもそもMOROHAの「三文銭」とかが胸にズドンズドンと響いてとても好きだったので、これは行かない手は無いわけです。

庄司輝秋監督とアフロ(MOROHA)

ラッパーですからね。しかもMOROHAを聴いたことがある人なら分かると思いますが、あのアフロですからね。どんな尖ったトークが……と思ったらこの笑顔ですよ。

失礼ながら、庄司監督が聞き手になってアフロが喋りまくるんだろうと思ったら、むしろアフロが庄司監督から話を聞き出す時間が長い!

さすが、プロのMCですよね。

話は変わりますが、呉城久美さん可愛いです。

帰りにはお二方からプログラムにサインをいただき、少しですがお話もさせていただき、満足して家路につきました。もちろん帰りのクルマでも、BGMはMOROHAでしたよ。

3月あれこれ

生きてます。

 

3月、何も書いてないよなぁ……と思ったら2月もほとんど書いてない!

まぁいいや。

今月何をしていたのか、自分も良く覚えていないのでスマホの中からネタを……。

水平線

3/1に映画を観に行ってましたね。この日に上映開始だった『水平線』を観に、UPLINK吉祥寺へ。初日の舞台挨拶付き。お得ですよ、こういうのは。会員価格の1100円で、出演者たちのお話が聞けます。ピエール瀧さんの適材適所的な演技も良かったですが、本物の漁師なんじゃ無いかと思わせる渡辺哲さんの演技が凄い。壇上でも淡々とプロのすごみを感じました。相馬方面へも行きたくなりました。特に松川浦ですね。

 

みなさん、シキミって知ってますか?

ワタクシは全然、聞いたこともありませんでした。

シキミ

祇園寺で開かれた自然観察会の際に講師の安西先生が持ってきた瞬間、あ、八角だ、と思いました。分類的には見た目通り、八角の仲間ですが、猛毒だそうです。牛でもコロッと逝く、とは安西先生の弁。マジすか。

というわけで、安西先生の観察会にも参加しました。

説明する安西先生

毎度、ものすごい量の情報が安西先生の口からあふれ出て、ほとんど全てを聞き逃しています ^^;

参加者の皆さんはメモをとって優秀ですね。ワタクシは書くと何も頭に入ってこないので聞くだけですが、それでもやっぱりほとんど残りませんね。困ったもんです。次回はレコーダでも持ち込もうかな……と思いながら、それはやっぱり失礼ですよね、と思うところ。

 

狆に囲まれる

久しぶりに小金井公園のお散歩の会にも参加してみました。

狆ばかり、10頭以上が集まるのですが、狆飼いってなにか、共通するところがあるような。みなさん、おおらかでゆっくりペースの方が多く感じます。

 

そして8月以来、例の流行病にも罹ってしまいました。

また出た

今回は味覚嗅覚を失わずに済んだようです。

 

ざっとこんな感じの3月でした。

川辺市子のために

2023年の12月ごろに「市子」という映画が気になり、予約を取るために調べているうちに、元となった演劇が気になった。15 8年も前の演劇らしいのだが、映画が好評だったためなのか、再演が決まったとの情報も。すぐに調べて、そちらも予約することが出来た。それが12月中旬。

映画は非常に面白く、杉咲さんの魅力と演技力も相まって、演劇はどんなものだったのだろうと期待一杯でサンモールスタジオを訪れた。

サンモールスタジオ

予想どおりの小さな劇場だが、二方向から見られるというので、側面の正面寄りに場所をとった(完全自由席、早い者勝ち)。結果的に演者が捌ける通路のすぐ脇で、なかなか面白い席だった。ちなみに最初の日曜日と言うこともあり、本当に満席だった。いや、臨時に席をプラスして対応していたようなので、満席以上だった。最終日まで完売らしく、キャンセル待ちの人も多数いるようです。

 

筋を簡単に説明すると、事情があって出産後に戸籍を取得しないままで育ってしまった市子が、その他もろもろの不遇を経て失踪してしまう、という、まるで実話のような鬼気迫る物語、です。省略しすぎですが。

 

本来、演劇を観てから映画を観るのが正しい順番なのでしょうが、それを言ってもしかたがないので、以下、逆順で見た率直な、そして単純な感想です。

 

杉咲花の市子が、かなりレベルで演劇の台詞を踏襲していたんだな、と感じた。言い方までそっくりで、随所随所で杉咲さんの台詞を思い出した。もちろん、本来順番は逆なんだけど。まぁ再現性が高く感じたのは、映画の監督が演劇版の作者であり演出家である戸田さんなので当然かもしれない。

一般に小説の映画化とかアニメの実写化なんかの場合は、元の作品を改変して別の作品を創り出すのが普通だと思うが、市子に関しては、舞台を映画にするというプラットフォームの変更であって、作品としては同じなんだな、と感じた。むろんあちこちに違いはありますし、15 8年前からは細かい部分のアップデートもあったそうです。
それにしても、杉咲さんは演じるにあたってずいぶん演劇を繰り返して見たんじゃ無いか、と。映像が残っているのかどうかは知らないんですけどね。もし見ていないんだとしたら、脚本家の頭の中にあるイメージの再現に、徹底して取り組んだ映画作りだったのだろうな、と思う。役者に任せるんじゃなくて、ね。

 

この舞台の後半、ワタクシは涙が止まらなかった。もう止めようもなさそうだったので、一切拭わずに流しておいた。その結果、左目と右目の涙の量が、1:4くらいであることに気づいた。左目の涙腺、詰まってる? ^^;

主演の大浦千佳さん、可愛いです。映画版でさつきの役をやっていた時とまったく違うのを見て、やっぱり役者ってすごいんだな、と思った次第。

感想、まとまらず ^^;

「川辺月子のために」もあったらしいので、そちらも観てみたいですが、今のところ再演の噂は聞けず……。

 

それにしても間近で観られる演劇の迫力って凄いですね。これはもう、映画と決定的な違いです。もちろん。映画にも映画の特長があります。

残念ながらチーズtheaterの方はキャンセル待ちですが、映画版の市子もまだまだやっています。興味がある方は、是非。

弟は僕のヒーロー

週末、いつものUPLINK吉祥寺に『弟は僕のヒーロー』を観に行った。今年2本目の映画だ。ちなみに昨年はDVD上映も含めて年間6本だったから、今年は開幕ダッシュだ。

反射しちゃった

肝心の、ダウン症の少年の表情が光で飛んでた。大失敗。

映画自体を年間数本しか観ない中、これは見逃せないと感じた一本。かみさんが特別支援学級で働いていたこともあり、障害児などの問題に対して、ちょっと興味が強い。

 

ある程度ネタバレにはなると思いますので、それが困る方はこの辺で閉じてください。

 

今回もそうした社会派の映画なんだろうと勝手に思い込んでこの映画を観に行った。つまりは、差別問題なんかを取り上げるのだろうと。

ところが実際は、ダウン症である弟、ジョーの存在を知られたくないと考えてしまった主人公ジャックが、小さな嘘から始まる嘘の連鎖に陥っていく話だった。

これは最初の嘘が何を隠そうとしたのかにはあまり重要性がないかもしれない。後戻りできなくなるこうした負のスパイラルは少年にはありがちな罠であり、ダウン症はそのきっかけとして必須だったわけでは無く、障害全般のどれでも良かったし、むしろそれ以外のどんな嘘からでも同じだったのかもしれない。

重要だったのは、少年の過ちと、それを包み込む家族の温かさだった。

映画を観る前に覚悟していた憤懣やるかたない差別への怒りはこの映画にはなく、むしろ主人公の絶望感にどんどん引き込まれてしまった。

(そうだよな、このつまらない意地が少年時代は大抵のものよりも重要に感じちゃうんだよな……)

という感じに、主人公と一緒に暗鬱な気持ちになる。なんか、久しぶりに映画の主人公に感情移入してしまい、それはそれで映画ならではの追体験のような時間を過ごした。

そして最後の場面。

既に仲直りしている兄弟がYouTuberとなって、動画がバズってハッピーエンドって、あんまりにも安易じゃ無いの?

と思ったら、そのあたりは実話だったらしい。実話じゃあしゃーないか ^^;

そうそう、UPLINK吉祥寺でこの映画を観ると、ヨシタケシンスケさんのポストカードがもらえます。先着順なのでいつまでもらえるか、分かりませんが。

ヨシタケシンスケさんのポストカード

ただ、天使とも言い習わされるダウン症の少年の良さは、しっかりと描かれていました。