粥村で聞いた話

鳥を見たり見なかったり食べちゃったり

川辺市子のために

2023年の12月ごろに「市子」という映画が気になり、予約を取るために調べているうちに、元となった演劇が気になった。15年も前の演劇らしいのだが、映画が好評だったためなのか、再演が決まったとの情報も。すぐに調べて、そちらも予約することが出来た。それが12月中旬。

映画は非常に面白く、杉咲さんの魅力と演技力も相まって、演劇はどんなものだったのだろうと期待一杯でサンモールスタジオを訪れた。

サンモールスタジオ

予想どおりの小さな劇場だが、二方向から見られるというので、側面の正面寄りに場所をとった(完全自由席、早い者勝ち)。結果的に演者が捌ける通路のすぐ脇で、なかなか面白い席だった。ちなみに最初の日曜日と言うこともあり、本当に満席だった。いや、臨時に席をプラスして対応していたようなので、満席以上だった。最終日まで完売らしく、キャンセル待ちの人も多数いるようです。

 

筋を簡単に説明すると、事情があって出産後に戸籍を取得しないままで育ってしまった市子が、その他もろもろの不遇を経て失踪してしまう、という、まるで実話のような鬼気迫る物語、です。省略しすぎですが。

 

本来、演劇を観てから映画を観るのが正しい順番なのでしょうが、それを言ってもしかたがないので、以下、逆順で見た率直な、そして単純な感想です。

 

杉咲花の市子が、かなりレベルで演劇の台詞を踏襲していたんだな、と感じた。言い方までそっくりで、随所随所で杉咲さんの台詞を思い出した。もちろん、本来順番は逆なんだけど。まぁ再現性が高く感じたのは、映画の監督が演劇版の作者であり演出家である戸田さんなので当然かもしれない。

一般に小説の映画化とかアニメの実写化なんかの場合は、元の作品を改変して別の作品を創り出すのが普通だと思うが、市子に関しては、舞台を映画にするというプラットフォームの変更であって、作品としては同じなんだな、と感じた。むろんあちこちに違いはありますし、15年前からは細かい部分のアップデートもあったそうです。
それにしても、杉咲さんは演じるにあたってずいぶん演劇を繰り返して見たんじゃ無いか、と。映像が残っているのかどうかは知らないんですけどね。もし見ていないんだとしたら、脚本家の頭の中にあるイメージの再現に、徹底して取り組んだ映画作りだったのだろうな、と思う。役者に任せるんじゃなくて、ね。

 

この舞台の後半、ワタクシは涙が止まらなかった。もう止めようもなさそうだったので、一切拭わずに流しておいた。その結果、左目と右目の涙の量が、1:4くらいであることに気づいた。左目の涙腺、詰まってる? ^^;

主演の大浦千佳さん、可愛いです。映画版でさつきの役をやっていた時とまったく違うのを見て、やっぱり役者ってすごいんだな、と思った次第。

感想、まとまらず ^^;

「川辺月子のために」もあったらしいので、そちらも観てみたいですが、今のところ再演の噂は聞けず……。

 

それにしても間近で観られる演劇の迫力って凄いですね。これはもう、映画と決定的な違いです。もちろん。映画にも映画の特長があります。

残念ながらチーズtheaterの方はキャンセル待ちですが、映画版の市子もまだまだやっています。興味がある方は、是非。