粥村で聞いた話

鳥を見たり見なかったり食べちゃったり

環軸椎亜脱臼の記録

まお(狆♀1歳)の環軸椎亜脱臼(かんじくついあだっきゅう)もひと区切りついた、と言えるところまで来たので、ここまでの推移を記録として残したいと思う。誰かの参考にでもなれば、と言う思いで。

ちなみにこの環軸椎亜脱臼という病気、犬に限るわけではないらしいく、人間にも見られるらしい。狆では比較的、多く見られる病気だそうだ。とはいえいままで生涯で6頭以上の狆と暮らしたかみさんにとっても、初めて聞く病名らしいが。

ことの始まり

始まりは避妊手術のあと、まお0歳8ヶ月と20日ほどのある日。

写真は術後服を着せてみたところだが、身体が左を向いている。まだ深刻なこととは考えていなかった。しかし次第に普通じゃないことを認めざるを得なくなる。身体をまっすぐにすることが難しくなり、ほとんど常に左を向いているようになる。

歩くのも前には進まず、ひたすら左回転を続ける。

食欲も落ちて、体重が減る

餌を食べなくなったので、せめてミルクだけでもと慌てて器具を買い求めた。最初は普通のシリンジで与えてみたが、この器具の方がまおが飲みやすそうだった。

行きつけの病院で、てんかんの可能性を言われる。

少しの動きでも甲高い声でキャンキャンと悲鳴を上げるようになる。

ほぼ毎日、点滴を受ける

ミルクだけでも何とかなっていたのは、おそらく点滴のおかげ。点滴さえ受けていれば、あとは水だけ忘れなければ、命に関わるようなことにはならない(栄養的な意味で)とかかりつけ医に言われる。

てんかん薬の効果は無いようだ、ということで、脳梗塞も疑い、そのための投薬も受ける。悲鳴の頻度も上がっているように感じた。

なかなか良くならない。ワタクシども夫婦は一時的にまっすぐ歩けたりすることに一喜一憂したが、獣医師は良くなっていないと言う。半信半疑で受け止める。

脳の障害かもしれないとのことで、獣医師に、キャミック城南でのMRIを提案され、手配していただく。前日まで改善の方向にあると信じていたワタクシどもにとっては、ショッキングな展開。

facilities.camic.jp

とりあえず呼ばれるのを待つ。

キャミック城南の待合室

程なく呼ばれていくまお。あとは待つしか無い。向かいのロイホで食事をしながら、MRIの結果を待つ。とても長くて味を感じない食事。

検査の結果は、脳に異常は認められないとのこと。

CTも撮るか、判断を求められる。もちろん即答でお願いする。

CTの結果、環軸椎亜脱臼の疑いが強い、との判断。

診察結果を受け取って、そのままかかりつけ医の元に戻る。

かかりつけ医はワタクシどもが世田谷から調布までドライブする間に、キャミックから情報の提供を受け、次の手を打った上で待っていてくれた。診察時間は過ぎていたのに、有りがたい話だ。

「明日、入院即手術の手はずを整えておきました。なかなか予約が取れないところなんですが、私のコネを最大限駆使して、割り込みましたw」

茶目っ気のある笑顔で告げるかかりつけ医。

「勝手に決めて申し訳ありませんが、手術を受けないメリットはありません。」

こちらサイドには思案するための材料が皆無なので、自信を持った表情で断言してくれると有り難い。でも明日は平日、ワタクシは仕事を休むんですね? ^^;

仕事よりも大切なことは、ある。

手術入院の朝

とんでもないバレンタインデーになりましたよ。

手術を受けるために向かった先は、日本動物高度医療センター。

jarmec.co.jp

多摩川沿線道路を走る際によく目にしていた病院だ。一般人も使えるのかな、夜中に急に具合に悪くなったときとか、どうなのかな、どういう施設なんだろうねと、よくかみさんと話しながら通っていた場所だ。まさかこんなかたちでお世話になるとは、夢にも思っていなかった。

まおを預けてかみさんと二人、重い気持ちで家まで帰る。帰るしかない。

 

翌日。手術当日。かみさんだけ病院へ。15:30面会の約束なのに、13:30には病院に着いてしまうかみさん。

手術が予定より延びて、やきもきするかみさんと、ひっきりなしに送られてくるLINEを読むワタクシ。16:30になってようやく先生が出てくる。

「まおちゃんは頑張りましたよ」

6時間近い手術、無事終了。

手術明けのまお

まだ喜怒哀楽を感じない表情。それでもちゃんと立ってるし、かみさんの方を見ている。ひとまず安心する。

管がいくつか繋がれていて、生かされている感じがする。

 

翌日もかみさんは見舞いに行く。

やっと抱っこ

まだ管に繋がってはいるが、やっと抱けて喜ぶかみさん。看護師さんに、

「まおちゃんは元気が良くて、クルクル回って管が絡みそうで大変」

と嬉しい愚痴を言われる。

更に翌々日、お見舞いに息子1号も駆けつけてくれた。

1号に抱かれて嬉しそうなまお

この時、ワタクシも術後の初対面。大変な歓待ぶりで、かなり安心する。こんな動きを見るのは、2週間ぶりくらい。

 

術後6日目。ようやく退院。

手術と現状の説明を受ける

優しくてイケメン、日本動物高度医療センターのI先生から説明を受ける。

手術前の状態

1番目と2番目の位置関係が問題。次の写真が術後で、正常な位置関係に戻してある。

術後の位置関係

よく分からないと思うので、CG(たぶんCTスキャンのもの)のほうに線を追加。

環軸椎亜脱臼

赤い線を着けたのが、頸椎の1番目(環椎)と2番目(軸椎)。環椎はその名の通り輪になっている。環椎の中を通る青い線が神経などの束。その下側に接するように延びているのが、軸椎の軸だ。

本来、赤い2つの線が一直線に並ぶはずなのが、平行になってしまっている。術後の写真では、これがほぼ一直線に矯正されている。

これでなにが悪いのかというと、青い線、すなわち神経の束が通る部分が狭くなってしまうこと。再び術後の写真の方を見てもらえれば、空間が広く確保されたことが分かると思う。

この狭窄のために神経が圧迫され、様々な障害の原因になるらしい。その結果がまおの場合、つらくて苦しくて、なんとか楽になるように左を向くしかなくなってしまったし、何かの弾みに神経が圧迫され、痛みのためにキャンキャン悲鳴を上げた、ということらしい。

この手術は写真に写っているように6本のピンを骨に打つことによって、環軸を強制的に正常な位置関係に戻して固定する、簡単に言えばそういうことらしい。

このピンはいずれ抜く、と言うわけではなく、半永久的に体内に残ります。たしか素材はチタンと言っていた。と思う。

 

とりあえず手術は無事完了したので、あとは定期的に通院しての経過観察のフェイズになります。

 

術後17日目、抜糸のため、日本動物高度医療センターに通院。

病院が嫌いになったりはしない

手術後の、仮のコルセットから、採寸してあつらえてもらった自分用のコルセットに付け替えてもらう。ピンクで可愛い。

今後は基本的にこのコルセットをして過ごします。外せる日はいつ来るのやら。

 

術後45日目。

経過観察のために通院。

4階のラウンジから

日本動物高度医療センターでは長いこと待たされる場合、4階にラウンジがある。周辺には喫茶店などが見当たらないため、ここが憩いの場。自販機がいくつかあって、カップ麺やパン、御菓子などもある。かなり遠くから来院される方も居るようなので、このスペースは重要。鳥見が出来そうな環境ではあるが、さすがにその気持ちにはなれなかった。

45日目、異常なし

「まおちゃん、じっとしてくれないからレントゲンが……」

と笑顔のI先生。

「そろそろ5分くらいなら散歩をしてもいいですよ。来週は10分、再来週は15分と、5分ずつ伸ばしていきましょう」

ええっと、既に20分以上の散歩をさせて……、いやなんでもないです。

 

術後58日

お散歩楽しいです

先生のご指示に従って、逆に抱っこを増やして、歩く時間を減らすようにしました ^^;

おかげで降ろすと喜び余ってテラ氏に攻撃を仕掛けます。

 

術後73日目。

経過観察のために通院。

おりこうにしている

待合室には色々な種類と症状の犬猫がいるのだが、総じてみんなおりこうさん。まおも釣られてお利口なフリをしている。この日も経過観察に異常は無し。

 

術後76日目。

マウントを取るまお

テラ氏が寛容なのをいいことに、まおはやりたい放題。どっちが男の子か分かりません ^^;

 

術後128日目。

最後の経過観察

特に問題も無く、ピンが1本無くなっている、なんてことも無かったようです。

I先生に拠ると、稀に皮膚を突き破ってピンが抜けてしまうこともあるようですが、その場合も気づかぬうちに抜けてしまい、他の目的で撮ったレントゲンでたまたま気づく、ということが多いそうです。

ともかくこれ以上することは無く、通院はこれで完了。コルセットも無くてもいいが、気になるようなら運動の際に付ける程度でいいとのこと。その場合も、8月くらいで終了して、もう付ける必要は無い、とのことでした。

かかりつけのT先生、キャミック城南の先生方、日本動物高度医療センターの皆さん、大変お世話になりました。ある程度の覚悟も決めていたワタクシでしたが、またこの子と楽しく過ごせる日に恵まれました。本当にありがとうございました。

ちなみに生臭い情報も必要とされる方も居ると思いますので書いておきます。かかった費用はかかりつけ医からMRI・CT、手術と入院、経過観察を含め、交通費は含まず、合計で7桁を少し超えました ^^;

コルセットを外してお散歩

わんこがまた何頭か買える金額ですが、この幸せな時間には換えられません。

最後にもう一度、関わってくださった医療スタッフの皆さん、本当にありがとうございました。