粥村で聞いた話

鳥を見たり見なかったり食べちゃったり

墓参り

思い立って、ある人のお墓に行ってみた。お葬式の時以来、数年ぶりだ。

何を思い立ったかというと、おそらく誰も行かないだろうから、寂しがっているんじゃ無かろうかと。誰も行かないというのは、故人がさっぱりとした性格のかたで、

「死んじゃったら来てもらっても何にもならないじゃない? 来なくていいわよ」

と必ず言うタイプの人だったから。

その合理的で協調性のない考え方は、昭和一桁にしてはちょっと珍しいタイプで、ワタクシとしては強い親近感を持っていた。

ならば行かなくてもいい、とは思うのだが、実はこの人のお葬式に使われた遺影が、ワタクシが撮った写真だったのだ。自分が撮った写真が遺影として使われる、というのは初めての経験だった。

「あの写真、遺影に使わせてよ」

そう人づてに頼まれて快諾したが、そのひと月後にはもう帰らぬ人となってしまった。

自分の祖父母の墓参りもしない不届き者だが、血も繋がらぬ故人から、何かを受け継いでいるような気がしている。

 

f:id:aiwendil:20210615162246j:plain

不届き者の届け物